JOHN WETTON 『CHASING THE DRAGON』(1995)
- アーティスト: ジョン・ウェットン
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 1995/02/17
- メディア: CD
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- Heat Of The Moment
- Don't Cry
- Rendez-vous 6:02
- Crime Of Passion
- Caught In The Crossfire
- Easy Money
- In The Dead Of Night
- Thirty Years
- Only Time Will Tell
- Hold Me Now
- Starless
- Book Of Saturday
- Battle Lines
- Open Your Eyes
- The Smile Has Left Your Eyes
- John Wetton: lead vocal, Fernandes bass, acoustic guitar
- John Beck: keyboards, harmony vocal, acoustic guitar
- Bob Dolton: drums, harmony vocal
- Andy Skelton: guitar, harmony vocal
- Produced by John Wetton
- Recorded live in Osaka & Tokyo, Japan 1994
ジョン・ウェットンは、'80年代前半のエイジアでの大成功と3rdアルバム『ASTRA』('85)の不振、そして実質的な解散を経て、'90年に再結成されたエイジアに参加したが、実質的な新作を発表することなく脱退。'80年発表の『CAUGHT IN THE CROSSFIRE』*1以来2作目となるソロアルバムの制作に取り掛かる。
そのアルバムは'93年中には完成していたようだが、契約上の問題でリリースが遅れ、とりあえず日本でのみリリースされることとなる。*2 それに伴い来日公演が実施され、ライブ・レコーディングされたのが本作だ。
リリースの経緯としては、日本公演の時に関係者が「すぐに海賊盤にされるので、正式なライブアルバムとしてリリースしてはどうか」と言ったところ、ジョンがふたつ返事で了承したとかという話を何かの記事で見たような気がする(真偽は不明)。たしかに、全体的にやっつけ仕事のイメージがあるので、上記の話にも信憑性があったり…
しかし、選曲は素晴らしい。まさに「ベスト・オブ・ジョン・ウェットン」。内訳はエイジアの曲(#1,#2,#9,#14,#15)、UKの曲(#3,#7,#8)、クリムゾンの曲(#6,#11,#12)、1stソロアルバムの曲(#5)、最新作の曲(#4,#10,#13)とツボを押さえている。
流れもいい。アコースティック・バージョンの#1から、ロック・バージョンの#2へのエイジア・メドレー、UKの#3、そしてシックに聴かせる新曲の#4へ。ノリのいい#5からクリムゾン・ナンバー#6、UKの代名詞#7へのメドレー。同じくUKの、バラードともいえる#8から、後半のインストパートをカットして、代わりにエイジアの#9へとつなげるアレンジ。
そして、静かに歌い上げる新曲の#10をはさんで、ジョンの「('70年代クリムゾンの最後のライブが行われた)ニューヨークのセントラル・パークから、今我々は帰ってきた」というMCに導かれて始まる#11「スターレス」。そして同じくクリムゾン・ナンバーの#12へ。この2曲はエイジアのライブ・アルバム*3でも演奏されていたが、そのアルバムでの「スターレス」では、ジョンはグランドピアノを弾きなから歌っていたのに対し、このアルバムではベースを弾きながらの演奏になっている。*4
次に演奏されるのは、映画のテーマ音楽にもなったジョンの新たな代表作#13。メンバー紹介をはさんで本編のラストと思われるエイジアの#14。そしてアンコールの#15。
あえて注文をつければ、もっと最新アルバムの曲をやって欲しかったということくらいか。しかし、ソロとして歩み始めた時期で、過去のバンドの曲を多く演奏するのも理解できる。ジョン・ウェットンのアルバムで1枚といわれれば、ぼくはこのアルバムを薦める。
ただし、問題点も多い。急造バンドゆえ、バンド・アンサンブルがあまり良くない。キーボードとドラムスのメンバーは、元イット・バイツで、ギタリストはスタジオ・ミュージシャンらしいのだが、個々人としてはともかく、バンドとしては問題がある。もちろん、ミックスの問題もあると思う。
その上、このアルバム以降、ジョン・ウェットン名義のライブ・アルバムが多数発表され、そのほとんどが海賊盤並みのつくりだったというのも、このアルバムやソロアルバムに対する批判につながっているようだ。
ただ、それとは別にジョンをプログレ畑の人間だと思っていて、エイジアやソロとしての作品になじめないという人の批判は受け入れがたい。個人的にはジョンはすぐれたメロディー・メイカーだと思っているし、ビートルズを敬愛するというジョンが書くポップな曲は大好きだ。クリムゾン・ナンバーでも、このアルバムに収められている#11,#12や、「ナイト・ウォッチ」は特にすぐれたメロディを持つ曲だと思うし、クリムゾン流(ロバート・フリップ流)のアレンジがその印象を薄くしているのだと思う。特に#11「スターレス」は後半部分の有無が曲の印象を大きく変える。
そういう意味では、やはりソロでこそジョンの魅力が生きるのだろう。この後、ソロアルバム『ARKANGEL』 を'97年に出すのだが、その後の活動はまさに迷走と呼べるもので… 個人的には追いかけるのをやめてしまった。『CHASING THE DRAGON』がジョンの「最後の輝き」とならないことを願う。
最後に、詳細な日本語ファンサイトがあるので紹介しておく。
「FANTASY FULL OF WETTON」 http://www.geocities.jp/johnwettonjp/
*1:asin:B00004SQRK asin:B00001OH64 asin:B00006IRKD asin:B00008J2S4
*2:『VOICE MAIL』(ヴォイス・メイル):海外では『BATTLE LINES』と改題されてリリース:asin:B000024OOR
*3:『LIVE MOCKBA 09-X1-90』('91):asin:B00005HFQI
*4:ただし、いずれも前半のみの演奏で後半のインスト部分はカットされている。